ベクトル解析において、ベクトル場\mathbb{f}=(f_1,f_2,f_3)の線積分と面積分

\int_C \mathbb{f}\cdot d\mathbb{r}
\int_S \mathbb{f}\cdot \mathbb{n} dS

である。定義はとても似ているのだが微妙に違う点がある。線積分においては曲線の進行方向と内積を取るのだが、面積分においては曲面の法線方向と内積をとるのである。一方微分幾何においては両方とも

\int_C \omega
\int_S \omega

である。ベクトル解析と微分幾何での定義が同じものであることは、座標を使って書いてやればわかる。

\int_C f_1 dx + f_2 dy + f_3 dz
\int_S f_1 dy\wedge dz + f_2 dz\wedge dx + f_3 dx\wedge dy

ベクトル解析においても線積分や面積分を座標を使って書くと同じ式になる。

ではなぜベクトル解析では面積分で法線ベクトルが現れるのか?ベクトル解析では面要素が法線ベクトルだからであり、微分幾何では面要素は2つの向きを持ったベクトル(2−ベクトル)であるからである。三次元空間に限って言えば2−ベクトルと法線ベクトルは同一視できる。

p-ベクトルで考えると線要素は曲線の進行方向、面要素は面の進行方向、体積要素は体積の進行方向というように統一的に定義することができる。ベクトル解析では三次元の特殊性をもって、面要素の2−ベクトルと法線ベクトルを同一視してしまったがために、線要素と面要素の方向に違いが現れたわけである。

これだけではない。ベクトル解析での定義に出てくる内積微分幾何では内積ではない。内積っぽく書けるのは、線積分のときと三次元空間の面積分の特例で、たとえば四次元の空間で考えると

\int_C f_1 dx + f_2 dy + f_3 dz + f_4 dw
\int_S f_1 dx\wedge dy + f_2 dx\wedge dz + f_3 dx\wedge dw + f_4 dy\wedge dz + f_5 dy\wedge dw +f_6 dz\wedge dw

となり、面積分されるベクトル場は四方向に拡散するのでなく六方向に拡散するわけで、四次元空間での流れというのは六次元ベクトル空間となる。一般にd-次元空間ではd-次元ベクトル場を線積分し、d(d-1)/2-次元ベクトル場を面積分する。

ということは、一般に線積分されるベクトル場と面積分されるベクトル場は異なっているわけなので、三次元空間においても異なった物理的意味があるはずである。線積分されるベクトル場はrotの対象となるベクトル場であり、面積分されるベクトル場はdivの対称となるベクトル場なはずであるから、例えば

http://en.wikipedia.org/wiki/Maxwell%27s_equations#Summary_of_the_Modern_Heaviside_Versions

みたいになっているわけだ。