単項p-ベクトル

そして、「単項p-ベクトル」という概念が現れる。

  • 単項0-ベクトルはスカラー
  • 単項1-ベクトルは方向を持った大きさ
  • 単項2-ベクトルは2方向を持った大きさ
  • 単項3-ベクトルは3方向を持った大きさ

つまり、単項1-ベクトルは普通のベクトルである。単項1-ベクトルの場合は向きと大きさが同じならベクトルも同じものだとしたわけだが、2以上の場合は話が複雑になる。

まず、二つの単項1-ベクトル(v_1, v_2)が与えられれば、単項2-ベクトル v_1\wedge v_2がひとつ決まる。二つの単項2-ベクトルv_1\wedge v_2, u_1\wedge u_2が等しいのをどう定めるかというと、次の条件を全て満たすときである。

  • (v_1, v_2)の張る平面と(u_1, u_2)の張る平面は等しい。
  • 各々の張る平行四辺形の面積も等しい。
  • さらに、各々のベクトルの組の向きも等しい(これは同一平面上にあるから比較できる)。

単項3-ベクトルのときも同様に定義できる。この方法だといくらでもおっけー。でも、もっと簡単に書けて、単項2-ベクトルでは外積が等しい。単項3-ベクトルではスカラー3重積が等しい、でいいような気がする。でも、これは3次元以外の次元では通用しないわけで、ほかの次元でも通用するように上のように書いたわけである。

単項2-ベクトルもベクトルみたいなものだから足し算やスカラー倍ができないと困る。スカラー倍は簡単で

 k(v \wedge u) = (kv) \wedge u = v \wedge (kv)

とするよりないのだが、足し算は難しい。単項2-ベクトルは常に足せるとは限らない。単項2-ベクトルは同一平面上にあるときにのみ足すことができる。二つの単項2-ベクトルv_1\wedge v_2, u_1\wedge u_2の和は、その平面の基底(e_1, e_2)を取ってきて、
v_1 = x_1 e_1 + y_1 e_2
v_2 = x_2 e_1 + y_2 e_2
u_1 = x_3 e_1 + y_3 e_2
u_2 = x_4 e_1 + y_4 e_2
とすれば、
v_1\wedge v_2 = (x_1y_2-x_2y_1) e_1\wedge e_2
u_1\wedge u_2 = (x_3y_4-x_4y_3) e_1\wedge e_2
となるので、二つの和は
v_1\wedge v_2 + u_1\wedge u_2 = (x_1y_2-x_2y_1+x_3y_4-x_4y_3) e_1\wedge e_2
となる。でも本当はもっと簡単に書くことができて、外積の和v_1\times v_2 + u_1\times u_2に対応する単項2-ベクトルが同一平面上にあるときの単項2-ベクトルの和になる。では、同一平面上にないときはどうなるのかというと、足した結果はもはや単項2-ベクトルではないのである。

こう定義するとd次元の単項p-ベクトルでも、同一p次元超平面上にある単項p-ベクトルどうしの足し算が定義できる。
さらに、d次元の単項0-ベクトルや単項d-ベクトルは常に足すことができることがわかる。単項1-ベクトルと単項(d-1)-ベクトルも足そうと思えば足せるのだが、単項(d-1)-ベクトルの場合はなぜか色々と問題が発生する。